はじめに
大相撲の歴史において、横綱という存在は特別な意味を持ちます。その中でも、平成から令和への過渡期において、圧倒的な強さと人間的なドラマで相撲ファンの心を掴んだのが、第69代横綱・白鵬と、第73代横綱・照ノ富士です。今回はこの二人の横綱の「強さ」と「背景」、そして「継承されたもの」について綴ります。
白鵬翔——史上最強の横綱か
モンゴル出身の白鵬は、2001年に来日し、2007年に横綱に昇進。
そこからは破竹の快進撃。通算優勝45回、幕内勝ち星1187勝という記録は、まさに“史上最強”の呼び声にふさわしいものでした。
彼の相撲は、柔と剛、技と力を併せ持つオールラウンダー型。立ち合いの変化から左四つに組み、冷静に寄り切る姿は、まるで職人芸。勝つことに対する執念は時に「横綱らしさ」を問われることもありましたが、そのすべてが彼の強さを物語っていました。
照ノ富士春雄——どん底からの復活劇
同じくモンゴル出身の照ノ富士は、2015年に大関昇進。しかし、その後は度重なる膝の大怪我や内臓疾患、さらには糖尿病に苦しみ、番付は**序二段(下から2番目)**まで転落。そこから奇跡的なカムバックを果たし、2021年に横綱へと昇進します。
彼の相撲は、重厚な四つ相撲。力強く相手を抱え込み、焦らずじっくりと攻めるその姿に、多くのファンが「地力」を感じます。白鵬のような天賦の才ではなく、苦労と努力で勝ち取った横綱の地位。それが照ノ富士の魅力です。
二人の関係と“継承された”もの
白鵬は現役時代、何度も照ノ富士と土俵を共にしました。2021年の7月場所千秋楽、白鵬が全勝優勝を果たし、直後に引退を発表したとき、最後に敗れた相手が照ノ富士でした。
この時、「世代交代」のドラマが明確になった瞬間でもありました。白鵬の築いた「勝利への執念」、そして相撲に懸けるプライドは、照ノ富士にしっかりと引き継がれています。
おわりに
白鵬と照ノ富士——二人ともモンゴル出身ながら、それぞれ全く異なる物語を歩みながら、横綱という最高位に辿り着いた力士たちです。白鵬の“天才”と照ノ富士の“努力”、この二つの系譜は、これからの相撲界にも深い影響を与え続けるでしょう。
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